140字で足りないこと

最近「うみねこのなく頃に」を始めました。

うみねこのなく頃に超絶ネタバレ記事 その2

今回は事件における魔法描写を中心に説明するよ。

 

★魔女とか悪魔が普通に登場するけど、これちゃんと説明できんの?

前回の記事でも説明した通り、それぞれのシナリオは事件後に漂着したメッセージボトル(または二次創作として執筆された「偽書」)によって語られる物語に基づいており、これらはベアトリーチェの主張で構成された世界です。

一般に小説の地の文(ト書き部分)は「神の視点」などと言われたりしますが、うみねこにおいては「魔女の視点」。魔女の主張としての物語だから「魔法」が描写されるのは当然なわけです。

 

★つまり全部が嘘というわけやな?

むしろその逆で全てが真実なんですよね。

我々が見せられているのはベアトリーチェの創作した物語なのだから、物語の外はさておき、物語の内側=ゲーム盤上では魔法は実在するのです。

しかしベアトリーチェは「魔法はある」と赤字では語らない。なぜならそれを議論するためのゲームを開催しているから。

だからこそニンゲンとトリックで説明できるだけのロジックも用意されているのです。

 

そもそもうみねこのストーリーを楽しむためには

■観測者によって語られる真実が世界を構成する

という前提を踏まえるのが最重要になります。

 

ゲーム盤において「魔法を見た」という描写は観測者(居合わせた当事者)たちの口裏合わせによって行われます。

魔法描写に限らず、掛かっていない鍵を「施錠されていた」と語ったり、死んでいない人間を「死んでいた」と語ることも、これに該当します。

この口裏合わせに加担する人物は全員ベアトリーチェに買収されるなどして協力している共犯者です。だからベアトリーチェの主張に合わせた証言をするわけですね。

もしも探偵役である戦人が同じ空間に居合わせていたなら、「いや俺はそんなもん見てない」と反論することができますが、魔法描写が発生するのは探偵の見ていない場面に限られるので、「魔法を見た」という主張だけを我々は見せられるわけです。

 

(余談)これは一見ぶっ飛んでいますが、非常にリアリティのあるロジックです。

現実に生きる我々も、世の中のあらゆる事象を自ら見聞きしているわけではないでしょう。新聞やテレビ、あるいはネットというメディアを通して情報を得ているにすぎません。

ではもし、新聞が嘘を吐いていたら? テレビやネットが自分たちの都合のいいように情報を提示していたとしたら? それがないと言い切れない限り、我々の見ている世界もまた、他者の主張によって構成されているといってもいいのではないでしょうか。

 

根本となるトリックは共犯者による口裏合わせ。

ベアトリーチェは自らの資産で親族や使用人を買収して、自分の都合のいいように証言させることができます。

それにより「施錠されていない扉」を「施錠されていた」ことにもできるし、「実は死んでない人物」を「死んだ」ことにもできる。「Episode4で食堂に現れた金蔵」なども同じロジックです。

そして全員が主張する事象は現実のものとして地の文で描写されます。共犯者の主張はベアトリーチェの主張とイコールですから、一番最初の「ベアトリーチェの主張として記述された物語」として成立するわけですね。

 

★でもEpisode2では戦人も魔女を目撃してた気がするで?

魔法描写にはもう一つだけルールがあって、死ぬ直前(具体的には30分前)の人物については魔法を目撃させることができるのです。

「死人に口なし」という言葉がありますが、まさにその通りで、共犯者であるかどうかにかかわらず死ぬ間際についてはベアトリーチェの主張によって強制的に上書きされてしまうのです。

なぜなら物語の語り手がベアトリーチェだから。誰も証言仕様のない事象については無条件で魔女の主張が通ってしまうわけですね。

Episode7で語られる通り、2日目の24時には爆弾が作動して屋敷ごと木っ端微塵になるので、Episode2のラストにおける戦人も「死の直前」ということになります。

 

今日はここまで。