ひぐらしのなく頃に業 3話時点での予想と仮説
ひぐらし業、鬼騙し編第3話が放送されました。
冒頭で羽入をぶち込んできたり、やたら力の入った演舞のあった前回と比べてかなり地味な回でしたが、情報としてはいくつか面白いものがあったので、いくつかの予想などをここに記しておこうと思います。
1 「鬼隠し+罪滅し」なのか?
Twitterなどを眺める限り、鬼隠し編と罪滅し編をミックスしたカケラと予想されてる方が多いようです。実際、シナリオも鬼隠しをベースに「レナの頑張り物語」など罪滅し編の要素を取り入れてるような様子で進行しています。
第3話の描写から、間宮リナと北条鉄平のどちらか、あるいは両者が既にレナによって殺害されていることは確実だと思われます。
ただ、北条鉄平&リナ殺しは罪滅し編の前哨戦のようなもの。そこからレナが疑心暗鬼に囚われ学校を占拠するのは鷹野のオカルト話を吹き込まれ、さらに大石が接触したからなわけで、鬼騙し編のレナにはそこまで至る動機がありません。
これは圭一についても同様で、富竹・鷹野から祟りについて聞かされたわけでもなく、また大石からも過去の事件と部活メンバーの関りを知らされておらず、疑心暗鬼ポイントをそこまで稼いでません。さすがにレナに対しては不信感を抱きつつありますが、魅音を疑う余地は今のところないですし。
なのでシナリオの着地としては鬼隠しとも罪滅しとも違う部分になるのではないかなと予想しておきます。
2 雛見沢症候群、発症しないかも?
鬼騙し編ではレナが不穏な行動を取っていますが、鬼隠し編のように圭一の疑心暗鬼が生んだ幻想描写というわけではなさそうです。
恐らく、第一話で圭一がダム現場に駆けつけたとき、レナはリナ・鉄平の死体を隠匿する作業をしており、もしかしたら自分の犯罪の証拠を発見されたのではないかと圭一を監視しているに過ぎないのではないかと思います。そして大石が圭一に接触したことで「やっべー」となり圭一の自宅を訪ねたのでしょう。「嘘だッ」の前に「ダム現場でなんか隠したよね?」と問い詰めてるのは、たぶんそういうことです。今回のレナは祟りについてあんま考えてない。
そして上記の行動のロジックにおかしな点はありません。もしレナが既に雛見沢症候群を発症していたら、もうちょっと妄想爆発させてそうな気がします。あとリンパ節が痒そうな描写もないですし。
また圭一も鬼隠し編に比べてかなり冷静な雰囲気です。KOOLではなくCOOL。いたって自然な言動で、とても発症しているようには見えません。
ここからちょっとメタ読みになりますが、シナリオ的な面白さを優先させるならレナも圭一も発症させてガンガン恐怖を煽る演出をする気がします。それをしないということは、今回のカケラには雛見沢症候群が関与しないという線も考えられなくはないでしょう。富竹、今のところ喉を掻き毟ってないですし。
前回の記事で指摘したように、ルールXが根本から変更されている可能性が濃厚になってきました。
そうなると、四年目までの事件はどういう理屈で発生しとんねん? という話になりますが…。
3 富竹と鷹野、どこ行った?
鬼隠し編でも鷹野は行方不明扱いでしたが、富竹はちゃんと変死していました。基本的に死んでしまう富竹のはずが、今回は何と行方不明扱い。死体が出てきていない以上、まだ生存していると考えた方がいいでしょう(うみねこかな?)。
ただ意味不明なのは鷹野の車が祭りの会場に放置され、富竹の自転車も同様に村内に放置されていたという点。
仮に梨花が事前に根回ししていて富竹がどこかに隠れるにしても、興宮まで自転車は使うでしょうし、鷹野だって診療所へ戻るのに自分の車を使うはずです。
鷹野が車を残したのは、失踪をアピールするためという可能性も考えられます。しかしアリバイ作りのためなら失踪よりも焼死体を偽装する方が有効なはずです。これまでそうしてきたように。
さらに言えば、富竹の変死は入江機関を疑わせるためにも必要な事件だったはずです。それが実行されていないということは、東京にまつわるアレコレが存在しないのかもしれません。
鷹野がシロなら失踪の意図が掴めませんし(単純な被害者?)、クロなら死体を提示しない意図が理解できません。あるいは富竹も共犯でまったく異なる事件を画策している可能性もありますが…(キコニアかな?)
4 大石は何がしたいの?
鬼隠し編と同様に圭一に接触してきた大石。祟りの話を吹き込んで富竹と鷹野の失踪について圭一の協力を仰ぎます。
しかし、鬼隠し編のように富竹が変死していたならまだしも、今回は単純に行方が掴めないだけ。それも半日ほどの話です。五年目の祟りだと決めつけるには早計過ぎます。
さらにレナの過去についても電話でべらべらと喋る始末。鬼隠し編では圭一がレナに不信感を抱いていたことから大石が情報提供したはずですが、今回の鬼騙し編で大石がレナの話を始めるのはロジックが成立しません。魅音の秘密について喋るならまだ理解できますが……。
となると、大石は既にリナ・鉄平が殺害されたことを勘付いており、容疑者としてレナをマークしているのではないでしょうか。富竹と鷹野はただの口実。鬼隠しが二人なら、生贄も二人というのはリナと鉄平のことかもしれません。
まあ、第三話の大石の台詞自体は「これから二人死ぬかも」みたいなニュアンスでしたが…。
あるいは大石も断片的に別のカケラを知覚していて、富竹と鷹野は五年目の祟りのはずだと確信しているとか、ないですかね。ないか。ないとは言い切れないか。
ひぐらしのなく頃に業 2話時点での予想と仮説
「ひぐらしのなく頃に」新アニメ化。
放送前の番宣では単純なリメイクのような素振りでしたが、昨日放送の2話から新シリーズ「ひぐらしのなく頃に業」であったことが明かされました。
とはいえファンなら1話の時点で何か様子がおかしいことには気づけていたはず。
鬼騙し編ということで、完全な新規シナリオ。2話冒頭ではいきなり梨花と羽入がカケラを俯瞰する世界で会話を始めます。
どうやら本編終了後の話で、古手梨花としても、ひぐらしの惨劇の根源たるルールXYZと黒幕「鷹野」の存在は既知であるようです。
……つまり再び昭和58年に戻されたとしても強くてニューゲームできる? まあ、そんなわけもないでしょう、ひぐらしなので。
ルールや黒幕が既知なのは視聴者も同じ。
「業」ではこれまでと大きく異なったゲーム盤になっていると予想されます。当然、惨劇のルールXYZも異なるはずです。
……そこで推理に満たない、いくつかの予想をここに掲げておきます。
1 北条沙都子・ラムダデルタ説
まず「黒幕は鷹野三四」という部分を変更してくると考えられます。
ここで新たな黒幕候補として浮上するのが梨花の親友である北条沙都子です。
根拠はありません。
……ありませんが、どうにも胡散臭い描写があります。
上記はヤングエースUP連載中の「ひぐらしのなく頃に業」の一コマです。
この台詞が単純にラムダデルタっぽい。
あ、ラムダデルタはご存知ですか? ひぐらしで鷹野三四を上位世界から操っていた魔女のことです。
第一話の部活(宝探し)シーンでは梨花をトラップに嵌めて宝(マジックペン)をゲットした沙都子。その後、梨花のビックリ箱で仕返しされます。これは「鬼隠し編」には存在しなかったエピソードです。
どうにもベルンカステルとラムダデルタの構図を暗示しているようにも思えてなりません。OPでも背中を向けて対立しているような描かれ方ですし。
またOPで登場する少女の正体も、中学生に成長した沙都子ではないかと予想しています。
というのも、梨花は少なくとも中学生まで成長した段階で、何者かに殺されて鬼騙し編のカケラに至っています。
しかし梨花が聖ルチーア学園に入学したとするならば、雛見沢とは関係のないところで殺害されたということになります。
では誰が聖ルチーアで梨花を殺したのか?
……同じく聖ルチーアに入学した沙都子なら殺害できたのではないでしょうか。動機は不明ですが。
「業」は沙都子が梨花を殺したことから発生したループなのかもしれません。そして彼女が今回のラムダデルタの駒である可能性も、まあ、あるかもな……と思ってます。
2 フェザリーヌ覚醒説
フェザリーヌって知ってますか? ひぐらしのゲームマスターだった魔女のことです。羽入と同一か、近しい存在です。しかし彼女は記憶装置がバグって人格変容でポンコツになったため、自身の勝利条件を忘れてしまっていました。
そこで駒である古手梨花にゲームの進行を任せ、しかし勝利条件も分からないので、梨花は目的不明のゲームを延々とリセマラさせられていました。
やがて梨花は「生きて昭和58年より先の未来を迎えること」を目標に据え、長いリセマラの末に見事達成しましたとさ。……これが「ひぐらしのなく頃に」というお話です。たぶん。
ただ今回、明らかに羽入とは異なる角の民のシルエットがOPで登場しました。
そして髪型と角(正確には角のような記憶装置)の形がフェザリーヌのビジュアルに酷似しています。
もしかすると「業」では正気に戻ったフェザリーヌが、きちんとゲームマスターを務めるシナリオなのかもしれません。
事実、うみねこ本編ではフェザリーヌは正気に戻っており、めっちゃ位の高い魔女として登場していました。
ちなみに、うみねこはひぐらしの3年後、1986年が舞台です。
「業」に登場する成長した古手梨花が中学3年生だとしたら1986年の話です。
フェザリーヌ「ふむ。……ゲームの目的を思い出した。再走するぞ。人の子よ」
3 ベルンカステル・ルールX説
「業」で古手梨花は昭和58年リセマラを始めたわけで、これこそがベルンカステル誕生の前日譚と予想する声も多いようです。
ただベルンカステルは(今回の古手梨花とは別に)既に誕生しており、そして「業」のゲームに干渉を始めているのではないかと予想します。
第二話で圭一が鉈を振り下ろしていたとき、彼の脳裏に鬼隠し編の記憶が一瞬フラッシュバックしました。罪滅し編ほど強烈な記憶ではないみたいですが。
これ、第一話で沙都子が梨花に仕返しを食らったときにレナが一瞬だけ呆けていたのも、同じ理由なんじゃないでしょうか。
レナもまた同様に、鬼隠し編で「圭一に撲殺される」記憶が蘇っていたとしたら、どうでしょう。それも断片的に。
「殺られる前に殺らなきゃヤバい!」ってなりません?
鬼騙し編のレナから殺意が漏れてるように見えるのはこれが原因なのではないでしょうか。
だとすれば、記憶の断片的な知覚による不和こそが今回のルールX。
そして他のカケラの知覚は、本来は奇跡的な確率によって起きる出来事です。……奇跡を操るのはベルンカステル。
ベルンカステルがゲーム盤に介入し、部活メンバーに他のカケラの記憶の「悪いところだけ」見せているとしたら惨劇の要因としては十分すぎるでしょう。
今のところ予想はこの3つ。
当たってなくても言うのは自由ですからね。俺は自由だ。
追記
古手梨花の年齢について
うみねこのなく頃にEpisode3お茶会にてベルンカステルがニンゲン時代のクリスマスのエピソードを語っています。古手梨花の両親が存命であることから年齢は推測可能です。
ラムダデルタについて
「ラムダデルタ卿による回想記」で、名前は伏せられているものの、ラムダデルタが鷹野(田無美代子)に加護を与えていることが明示されています。
また、うみねこの物語を素直に読めば、ひぐらしのゲーム盤において鷹野がラムダデルタの駒であるという理解になると思います。
今回はひぐらしの記事ですので、わかりやすく「操っていた」という表現を用いましたが、「駒にしていた」が適切かもしれません。
キコニアのなく頃に 推理メモ
・哲学的ゾンビ説
工場生まれの人間は生まれながらにセルコンを埋め込まれている。
セルコンにより「人格プログラム」がインストールされており、自我が芽生えることがない(あるいは芽生えた自我は消去される)。
→つまり工場生まれの人間は「人格プログラム」によって動く哲学的ゾンビである。
・御岳都雄ゾンビ説
8MSにより死体を腐敗させることなく動かすことができる。
またセルコンにより「人格プログラム」をインストールすることで、自我を持ったゾンビが完成する。
→御岳都雄の人格はプログラムらしい。
→御岳都雄は既に死んでおり、8MSと「人格プログラム」で生者のように振舞っているだけ?
→都雄の背丈が低いのは既に死亡しており成長しないから?
・セルコン≒雛見沢症候群説
雛見沢症候群の感染者は女王感染者の死亡により暴徒化するとされている。
セルコンのマザーシステムが破壊されると、全人類のセルコンが機能停止し、「人格プログラム」を喪失した人間たちは理性を失った暴徒と化す。
→クロエの仮想空間は、セルコン機能が失われた世界?
→女王感染者のようにマザーシステムを脳内に搭載した人物が存在する?
→「犯人」の狙いは女王感染者、脳内にセルコンのマザーシステムを埋め込んだ人物を殺害すること?
犯人候補→「鷹野三四」に該当しそうな人物
「御岳都雄」「フィーア・ドライツィヒ」「ジェストレス」?
女王感染者候補→「古手梨花」に該当しそうな人物
「コーシュカ」?
→人類の人格を失わせる目的
工場による全人類電脳化は「人格」を前提としており、あらかじめ「人格」を機能停止させることで稼働の意義を喪失させる?
・三人の王、雛見沢御三家説
スリーパーソンは人類滅亡を企む黒幕ということになっているが、実際はジェストレスが実権を握って計画が実行されている。ひぐらしでも雛見沢御三家は事件の核に関与しておらず、鷹野が暗躍していた。
→三人の王はブラフ? 陰謀論の象徴?
うみねこ漫画版EP8とはなんだったのか
ひぐらしのなく頃に、再アニメ化!
うみねこのなく頃に、コンシューマ版開発中!
そんなこんなで……
「うみねこも漫画版EP8準拠でアニメ化してくれ~」
「コンシューマ版も漫画版EP8の内容で再録してくれ~」
という声も少なくないわけですが…。
「原作は最後が投げっぱなしだから漫画版EP8を読めばいいよ」
なんて声も昔からありますが…。
これだけ漫画版EP8が支持されるのには理由がありまして、大幅な加筆により「原作では明らかにされなかった真相」を読者にきちんと開示したという点が大きいと思われます。うみねこ風に申し上げるなら猫箱を開けたとでも言いましょうか。
特に第6巻に収録された「Confession of the golden witch」の内容は凄まじく、EP7におけるクレルの告白を一切の脚色なく描写し、さらには原作では語られざる空白の2年(ベアトが碑文を解き明かしてから事件が起きるまでの葛藤)すらも詳細にコミカライズされています。
この「空白の2年」については、EP7が頒布された2010年当時、「EP8で明かしてくれるんだろうなあ」と期待していた読者もそこそこいた記憶があります。ところが彼らは、実際のEP8で肩透かしを食らい、その後に頒布された「我らの告白」でも当該の内容には触れられませんでした。
…ということは、漫画版のEP8こそが、まさに読者たちに期待されていたEP8そのものの形でして、評価が高いのも頷けるというわけです。
ところがですよ。2020年、平成は終わり令和の世になってまで「うみねこ」に囚われている者たちというのは、原作のEP8を受け入れた側の人間です。それはつまり、猫箱を閉じることを選択した側の人間です。
なので、ヘビーな読者の間では、漫画版EP8のクオリティの高さについては文句ないものの、あのように真相を明かしたというスタンスについて必ずしも絶賛されているわけでもないのです。
ここから本題のような、そうでもないような話をします。
「そもそも原作と漫画版のEP8って、もはや別物じゃない?」と思うんですよね。
「EP8が誰のための物語なのか」と考えたときに、原作と漫画版では対象か異なっているんです。
まず原作EP8ですが、あれは「縁寿のための物語」に見せかけて、実はたぶん違うんですよね。一番最後の最後に「この物語を我が最愛の魔女ベアトリーチェに捧ぐ」の一文が差し込まれるので、結局のところ原作EP8はベアトリーチェに向けた物語なんです。「縁寿はこうやって未来に生きていくよ、だから安心して眠ってね」というニュアンスですかね。
原作EP8は、その物語の対象がベアトだから、わざわざ真相を開示する必要がなかったんです。
対して、漫画版EP8は上述の、ベアトに捧ぐというテキストがありません。その代わり、一番最初の冒頭に、原作には存在しないテキストが追加されています。
今一度物語を紡ごう
安らかに眠る彼の人のためではなく
もう一人の大切なあなたのために
これ、明らかにベアトではなく縁寿ですよね。
そして今一度紡ぐ、というワード。
……つまりですね、漫画版は二周目なんですよ。原作EP8の読了を前提にして設計されているんです。
漫画版EP8は縁寿を対象にした物語である以上、語られざる部分も包み隠さず提示していきました。
まずは絵羽の日記の中身がEP7お茶会そのものであることが明かされました。
次に八城幾子がConfessionのボトルを拾い、安田紗代の告白が提示されます。
最後に、一なる真実において戦人が如何にして島を脱出したのかが描写されます。
漫画版で明かされたものとしては、この3つがメインでしょうか。
……さて、ちょっと逸れますが「原作の八城十八と漫画版の八城十八って中身が別人じゃない?」って話がしたいんですが、いいですか?
八城十八は、六軒島から脱出した戦人が記憶障害に陥って生まれた存在です。記憶そのものは殆ど復活しているのですが、その記憶を自分のものとして受け入れられない、という後遺症に悩まされています。
この八城十八の中にある記憶、…六軒島から脱出した戦人の記憶なんですが、実は原作の十八には「バトラ卿の記憶」があるんじゃないかと推測しています。
つまりEP8の最後で六軒島を脱出した二人は、第8のゲームのバトラ卿とベアトだったわけです。ハロウィンパーティーの地続きですね。ちなみにEP6でそれを示唆する台詞があります。
「ゲームは、消えるだろうな。……だが、俺はもう、魔法を完全に理解している。……だからお前を、ゲーム盤の外へ連れ出せる。………それが、お前の望みだったはずだ。」
で、八城十八は記憶を取り戻していくのですが、それはバトラ卿の記憶である以上、偽書の執筆も容易というわけです。そして数十年の時を経て、寿ゆかりと出会い、十八の中のバトラ卿は黄金郷に迎えられましたとさ……。めでたしめでたし。
ちなみに根拠っぽいものはあったりします。…実は、十八が1986年の六軒島の記憶をフラッシュバックさせるシーンで金蔵の姿があるんですよね。ハロウィンパーティーでは金蔵は生きていることになってたので。
さて一方で、漫画版はどうなのかというと、八城十八の中にあるのは「一なる真実の戦人の記憶」だろうと思われます。
…というのも、漫画版では絵羽の日記の内容が明かされ、事件当日の猫箱の中身が赤で確定してしまっています。だから原作のように「六軒島でハロウィンパーティしてました」のようなIFが許されない。
さあ、漫画版の十八も記憶を取り戻していきますが、今回はバトラ卿の記憶ではなく、ただの戦人の記憶です。これでは原作の十八のように偽書を執筆できませんね。
そこで漫画版オリジナルの「Confession」が登場するわけです。漫画版の十八は全ての真相が記されたメッセージボトルを読むことで、ようやく偽書を執筆するという辻褄を合わせられるのです。
ついでに、漫画版では十八のフラッシュバックの中に金蔵の姿はありません。一なる真実では既に死んでますからね。1986年には出会っていない。
そして漫画版の最後には、一なる真実で戦人が島を脱出するまでの過程が明かされます。これも十八に「一なる真実の記憶」があるからです。
その後、漫画版でも数十年の時を経て、寿ゆかりと出会い、十八の中の戦人は黄金郷に迎えられるわけですが、その黄金郷にはマントを羽織ったバトラ卿が既に待っていました。……なぜか? それはバトラ卿が一周目、つまり原作EP8で、既に黄金郷に迎えられていたからです。
漫画版EP8で黄金郷に迎えられた戦人は「一なる真実の戦人」です。…ということは、彼は原作の段階ではまだ黄金郷に至っていなかったということになります。
…ここで思い出して欲しいのは、ベアトの入水後に追加された漫画版オリジナルの描写です。
共に海に沈んだ戦人とベアトでしたが、気付けば二人はメタ世界に辿り着きいていました。しかし戦人には一なる真実での記憶がなく、そしてEP1からのゲームが始まるぞ…という展開になります。
ループっぽいですが、よく考えると別にループではありません。その後、メタ世界の戦人はベアトと論戦を繰り広げ、真相に至り、バトラ卿となるわけです。
ここで気になるのは「メタ世界の戦人、一なる真実の記憶がないよなあ?」という点です。だからバトラ卿にも一なる真実の記憶がなく、つまり原作EP8では「一なる真実の戦人」は物語から零れ落ちた存在だったのです。漫画版でようやく救済されたと、そういうことです。
…そう考えると、ベアトの事件の動機って「6年前の罪を思い出してもらうこと」なわけですが、メタ世界のベアトは「一なる真実において二人で会話した記憶」を思い出して欲しかったのだろうな…ってなりますね。原作ではそれが叶いませんでしたが、漫画版でようやく…。
まあ、そういうことなんですよね。原作は一周目、漫画版は二周目。これはもうセットで完成するものなので、漫画版だけ読めばいいってのは推奨できないよっていう、逆に漫画版読んでない原作プレイヤーは読んでねっていう、そんなオタクの主張でした。
うみねこのなく頃に ルールXYZ
ルールX
ⅰ事件は主犯+複数人の共犯によって遂行される
ⅱ主犯=真犯人の正体は、魔女ベアトリーチェである。これは一個体のニンゲンではなく、魔女という人格(キャラクター)そのもの。この人格(キャラクター)は右代宮理御=安田紗代によって演じられる
ⅲベアトリーチェは魔女であるため、人間の在島人数に含まれない。基本的に殺人や密室構築には直接関与せず、共犯関係にあるニンゲンを使役して事件を実行する
ⅳ事件の見立てが第九の晩に至ると、復活の儀式を完遂したと称して、ベアトリーチェは自らの手で殺人を行うことがある。第1のゲームの夏妃殺し、第3のゲームの南條殺しなどがこれに該当する
ⅴ安田紗代の演じる紗音・嘉音、そしてベアトリーチェの忠実な僕である源次は、全ゲームで共犯者であり、ほぼ全ての殺人はこの三人の手により遂行される
ⅵ安田紗代の出自を知る熊沢と南條も全ゲームで共犯関係にある。主な役割は偽証である
ⅶ上記ⅴⅵ以外の共犯者はシナリオによってランダムに選定される
ⅷベアトリーチェは隠し黄金、それを秘密裏に換金した現金で親族や使用人を買収、あるいは脅迫により共犯関係を結ぶ
ⅸ買収された共犯者たちは殆どが偽証を行うのみに留まるが、殺人を実行するケースもある。第3のゲームでは紗音、嘉音、源次が死亡しており、その後の殺人の続行のため買収した絵羽に殺人を遂行させた
ルールY
ⅰ場の全員が口裏合わせをした嘘の証言は、地の文(ト書き)で現実として描写することができる
ⅱ地の文が登場人物の主観描写である場合、その人物によって偽られ、都合よく脚色されることがある
ⅲ上記ⅰⅱは買収された共犯者に限らず、全ての登場人物に許されている。たとえば夏妃は買収されていなくても金蔵と会話する場面が地の文にて記述されている
ⅳ探偵役に限ってはゲームの公平性から客観的視点を義務付けられているため、上記ⅰⅱⅲのルールは適用されない
ⅴ買収した共犯者には、魔女である犯人の主張として、黄金蝶を始めとした魔女幻想を地の文で目撃させることができる
ⅵ共犯者以外であっても、既に死亡した人物、または死に至る直前(具体的には30分前)の人物については、地の文で魔女幻想を目撃させることができる。純粋な犠牲者が魔法で殺害される描写はこのルールに基づく
ⅶ上記ⅵは犠牲者自身が主観を偽ることに依拠しているわけではないため、探偵役にも適用される。第2のゲームの戦人が黄金蝶を目撃するのはこのルールに基づく
ⅷ一人二役(三役)である紗音と嘉音を同時に視認することは、魔女幻想の目撃と同様の扱いとなる。厳密には一人二役であることを知る源次、熊沢、南條は共犯者でなくとも同時視認が可能であるが、彼らは全ゲームで共犯者であるために事実上、共犯者特権であると言える
ルールZ
ⅰ事件は殺人事件+碑文解読という二つの出題を組み合わせた形で提示される
ⅱ殺人事件は探偵役である戦人を対象にしたミステリーであり、事件の動機は6年前の罪を思い出させて謝罪させることにある
ⅲ碑文解読は安田紗代が自身の運命を決定するために仕組んだゲームであり、安田紗代は碑文解読者に右代宮家の家督と自身の生殺与奪を委ねる心算でいる。彼女は特定の人物が碑文を解読するという結果を期待はするものの、結果が与えられること自体が目的であるため誰が解読しても、あるいは解読されずともそれに従う
ⅳ二日目24時を迎えた時点で時間切れとなり、地下の大量の爆薬に繋がれた時限装置が作動。屋敷の周囲一帯が爆破される
ⅴ殺人事件を中止させる方法は、戦人が犯人を特定するか、誰かが碑文を解読してゲームの勝者であると認めさせるしかない
ⅵ上記ⅴのように戦人が犯人を特定したとしても、殺人は中止されるが時限装置は作動する。安田紗代を殺害したとしても同様である。爆破を回避するためには碑文の解読が必須となる
ⅶ碑文解読者には隠し黄金、九羽鳥庵への通路の鍵、時限装置の解除方法が与えられる。地下通路は施錠されており、碑文が解読されない限りはそこから逃亡することはできない
うみねこ咲をプレイして
2010年に最終話となるEP8が頒布され、小冊子等で新規短編は公開されつつも、「golden witch」を題したナンバリングの新シナリオは完結以降では初めて…ということでメチャメチャ緊張しつつのプレイでしたが、結論から述べると良質な短編シナリオでした。
ぶっちゃけ、プレイ直前までは珍しく胃がキリキリしており、その理由と言えば、うみねこ咲の主題歌「白金のエンピレオ」の歌詞がヒジョーに不吉だったせいです。"愛を知る者たちを嘲笑い虚妄に還す"とか歌ってるんですよ。怖い。
……そんなわけで、今回の新シナリオで、我々がEP8までに築いてきた幻想やら妄想やらをひっくり返してくるのではないかとガクブルだったわけです。……まあ、ある意味では、その通りではあるんですが。
■新シナリオ「lastnote」について
「難易度は高め」ということなのでで覚悟して挑んだものの、実際のところ結構あっさりバッサリ犯人が特定できてしまったのでは?
今回は「私はだぁれ?」という一点のみの出題。ただし魔女幻想の肯定・否定は問わないことになっていました。
……正直。この難易度の高さを理解できずに読み終えてしまってるプレイヤーもいるような気がします。なぜなら結局のところ右代宮明日夢という"ニンゲン"が正解なオチだったのですから。
ピースのゲームの真の恐ろしさは"幻想の魔女や家具"が犯人だという解答でも十分に許されるところにあるのです。
それはロノウェでもルシファーでも構わない。彼らがこのたび初披露の魔法で親族を殺害した…が正解だとしても、それは今回のゲームでは許されてしまう。作中で戦人やベアトが指摘した青き真実「ピースが犯人である」を、ちゃんとクソ真面目にシリアスに捉えられましたか?
まあ、所詮は幻想描写じゃん? と切り捨ててしまい、名有りの登場人物から"ニンゲン"に絞り込んで適当に挙げれば犯人に思い当る…みたいな方法でも今回は切り抜けられちゃうわけですが。
…っていうか、実際にピースが霧江たちを殺してるんですよね、あのカケラでは。ウィルも「死体なき事件であることを禁ず」と言ってるでしょ? どっちにしろ死体は消されちゃってますけどね。フェザリーヌのカケラというのはそういうことです。ベアトと違って、何も制約がない。
で、シナリオ自体はめっちゃ泣けました。というか割と早めに正体が特定できてしまうせいで、存分に涙腺が緩ませられるって寸法かもしれません。そしてうみねこファンならば、どこかで聴いたことのあるBGMが流れ始めた時点で、その曲のタイトルを思い出せれば確信できてしまう。憎い演出でした。
■新魔女ピースについて
魔女を名乗って登場する新たな敵、ただのお淑やかな少女なワケがないでしょう?
アヘ顔ダブルピースで奇声を上げる「駒の魔女」のピース。…その能力は、髪をカーテンの海にして相手を呑み込み、その"存在"ごとを消し去るというもの。個性あふれるキャラクター、ビジュアル、新キャラとして申し分なしという感じです。
フェザリーヌ直属の刺客として登場したのは驚きつつも、確かに髪型似てるしな…と納得しました。
さて、フェザリーヌの駒たる彼女の魔法、ハチャメチャに高度で上位なものです。戦人たちが「黄金の魔法」に近いのではと考察していましたが、魔法としての格が違いますし、どちらかといえば「無限の魔法」の方が系統としては類似していると思われます。
ベアトの「無限」は、言ってしまえば過程の修飾によって、事実を上塗りというか、上書きしてしまう力があります。……実際はライフル銃で殺害したとしても、それを魔女幻想で事実を塗り潰し、魔女が魔法で殺したことにしてしまう。…ただし、それは元から記述されていた文字の上に、別の文字が印刷されたテープを貼り付けるようなもの。ウィルのような異端審問官にぺりぺりと丁寧に剥がされたら、元の文字が露見してしまう程度のものです。
一方でピースは文字を消しゴムで真っ白に消してしまえるわけですから、その恐ろしさは比較になりません。より、不可逆的というか。後には綺麗さっぱり真っ白な紙が残るだけ。虚無です。そこに再び世界を紡ぐなら、また0から鉛筆で書くしかないわけです。……まだ彼女の恐ろしさが理解できませんか?
たとえば。これこそ真実にして事実にして現実であり、その他は幻想妄想白昼夢の作中作だ! と言い切ってしまえるほどの「一なる真実」というものがあります。
「一なる真実」とは霧江と留弗夫が大量殺人に手を染めて絵羽に返り討ちに遭う、アレですね。…個々人が信じるか信じないかは勝手ですが、一般的な解釈だとそういうことになってます。
で、その「一なる真実」でさえも、消してしまえるのがピースなんです。だって実際のところ、我々は漫画版EP8で補足されるまで、奇跡的に無事だった安田紗代が地下通路で戦人と会って…なんて事実を知らなかったはず。あれはピースがカケラごと呑み込んでたのを、コミカライズで加筆があるというので吐き出してくれたものなんです。
……わかりますか? つまり原作者がうみねこという物語において、ここは描くべきか描くべきでないかと悩んだ結果の取捨選択。その「捨」にあたる力こそがピースそのものといってもいいでしょう。ここまで説明すれば、恐ろしさが理解できたでピスか?
ちなみにこのキャラ、07thファンには有名ですが新規描き下ろしデザインのキャラではありません。とはいえ没キャラでもない。かつて竜騎士07がローゼンメイデンのオリキャラコンテストに応募した「金剛石」というキャラがデザイン元です。なんやねんそれ。
Episode6、最後の犠牲者は古戸ヱリカ?
仮説:EP6で古戸ヱリカは真犯人に殺害されたのではないか?
前提として
1.古戸ヱリカは当該ゲーム盤で殺人を犯している
2.ノックス第1条「犯人は物語当初の登場人物以外を禁ず」
3.ヴァンダイン12則「真犯人が複数であることを禁ず」
4.EP6の第二の晩の犠牲者は嘉音である
よって、古戸ヱリカは共犯者である
なぜなら...
事件遂行のために殺人を犯せるのは、(真)犯人か共犯者である
EP5以降の登場人物であるヱリカは犯人(事件首謀者)として認められない
嘉音を殺すことができるのは、嘉音を演じる人物=過去のゲームの真犯人だけである
Ⅰ.第6のゲームの真相
・古戸ヱリカ共犯者説/右代宮戦人探偵説
EP6の事件は、戦人たちの計画した狂言殺人のドッキリに乗じてヱリカが本当の殺人を実行したというのが真相だ。
そもそも狂言殺人だったのは何故か。それは殺人事件が発生するほどの動機が存在しないからである。
過去のゲームの真犯人が大量殺人を犯すに至るのは、探偵役である戦人に謎を解かせるためだ。この犯人と探偵の因縁・関係性があるからこそ、人が死ぬだけの事件が発生する。
一方でEP6の狂言殺人はヱリカを対象にしている。単なる来訪者である彼女に対して、本当の殺人事件を提示する必要性がない。だから飽くまでも「ドッキリ」に留まる。
しかしヱリカは実際に殺人を実行した。もちろん先述した通り彼女は単なる来訪者であり、右代宮家を殺害する動機はない。
…であれば、ヱリカは共犯の殺人代行者であり、事件首謀者が裏で手を引いていると考えるのが妥当だ。
また事件に探偵役が必須であることはヴァンダイン6則で定められているが、EP6のヱリカは探偵ではない。
この事件首謀者たる真犯人の正体が過去のゲームと共通であるならば、探偵役もまた以前(EP5を除く)と同じく戦人であると考えられる。
つまり、探偵役の戦人が狂言殺人に参加するも、真犯人であるベアトリーチェと共犯者ヱリカによって本物の殺人計画が仕組まれていたというのが真相だ。
Ⅱ.ロジックエラー密室の解法
・嘉音⇔ベアト人格切り替え説
一般に、ロジックエラー密室の解法として考えられているのは、紗音・嘉音同一人物説を用いた「紗音が隣部屋の窓よりゲストハウスを脱出し、嘉音人格として客室に入室。客室内で紗音人格となることで、客室から嘉音を消失させる」という人格トリックだ。
当記事でも人格切り替えトリックを採用するが、ゲストハウス脱出は別にして、嘉音消失については嘉音⇔紗音人格トリックを必要としない。
嘉音⇔ベアトリーチェの人格トリックにより嘉音消失は説明可能だからだ。
以下は、ヱリカがベアトとの決闘時にクローゼットを青き真実で穿つときのテキストだ。
放たれし5本もの青き真実の楔は、ベアトの頬や髪や肩を掠め、……クローゼットを扉ごと滅多刺しにし、中に隠れている人間を、扉ごと、抉り殺す……!
その5本の楔は、縦に5本が真っ直ぐ打ち込まれていた。それは即ち、第四の晩に、頭を抉りて殺せ。第五の晩に、胸を抉りて殺せ。第六の晩に、第七の晩に、第八の晩に、抉りて殺せ殺せ殺せ…!!
これはヱリカのクローゼット検証時、事件が既に第九の晩にまで至っていることを暗示している。この時点で嘉音は客室より消失、その代わりに復活した魔女ベアトリーチェが客室内に存在しているというロジックが通る。
そもそも恋人たちの決闘に敗北して肉体を失った二人が戦人の救出に向かうのだから、紗音をロジックに組み込むよりも、嘉音⇔ベアトのみで説明する方が、物語自体との整合性も保たれるだろう。
Ⅲ.第九の晩の殺人
・古戸ヱリカ最後の犠牲者説
ロジックエラー密室において「客室内を検証するヱリカは、"嘉音ではない人物X"を発見できるのではないか?」という意見がある。
まずはヱリカの密室検証をおさらいしたい。
客室はベッドルーム・バスルーム・クローゼットの3区分で構成されている。
ヱリカは客室入室後、ベッドルーム、次いでバスルームを確認した。そして彼女はバスルーム確認中に、クローゼット内の戦人と入れ替わりで嘉音が入室、ベッドルームあるいはクローゼット内に隠れたのだろうと推理し、再度ベッドルームとクローゼットを青き真実で貫いた。
つまりベッドルーム・クローゼットのどちらであっても、「少なくとも"嘉音ではない人物X"がいる事実をヱリカは発見できるはず」という指摘は妥当だ。
これについては以下、クローゼット検証時のテキストを手掛かりとしたい。
その人影は、灰緑色のローブのようなものを、頭からすっぽりと被っていた。……無論、それにも穿たれたことを示す大穴が開いている…。
やがて、それはローブではなく、雨ガッパだとわかる。
……ゲストハウスから大急ぎで走って来たなら、それを被ったまま客室に入ることになったとしても、不思議なことではない…。……そして、……ふわりと、………くしゃりと、………雨ガッパが、……人の形を失って、……崩れ、………黄金蝶の群となって、…消える………。
クローゼット内には雨ガッパを頭から被った人影があった。その人影は黄金蝶となって霧散するが、それは上位世界での概念的な描写だ。重要なのは少なくともクローゼット内に人影があったということである。
クローゼットの扉を開いたヱリカは、その中に潜んでいた人影と対面したのではないか。だが相手は雨ガッパにより顔も姿も隠していたため、正体が分からなかったのである。
さて上位世界において、クローゼット内に嘉音が不在であることを提示したベアトは、その直後に弾丸でヱリカの胸を貫いた。…同じことが盤上でも行われていないだろうか?
クローゼット内に潜む雨ガッパの人物=ベアト=真犯人が、扉を開けたヱリカを対面直後に殺害したのではないかと推測する。つまりヱリカは、確かにクローゼット内に“誰か”が潜んでいたことを認識しながらも、相手の正体が分からないままに殺害されたのだ。