Episode6、最後の犠牲者は古戸ヱリカ?
仮説:EP6で古戸ヱリカは真犯人に殺害されたのではないか?
前提として
1.古戸ヱリカは当該ゲーム盤で殺人を犯している
2.ノックス第1条「犯人は物語当初の登場人物以外を禁ず」
3.ヴァンダイン12則「真犯人が複数であることを禁ず」
4.EP6の第二の晩の犠牲者は嘉音である
よって、古戸ヱリカは共犯者である
なぜなら...
事件遂行のために殺人を犯せるのは、(真)犯人か共犯者である
EP5以降の登場人物であるヱリカは犯人(事件首謀者)として認められない
嘉音を殺すことができるのは、嘉音を演じる人物=過去のゲームの真犯人だけである
Ⅰ.第6のゲームの真相
・古戸ヱリカ共犯者説/右代宮戦人探偵説
EP6の事件は、戦人たちの計画した狂言殺人のドッキリに乗じてヱリカが本当の殺人を実行したというのが真相だ。
そもそも狂言殺人だったのは何故か。それは殺人事件が発生するほどの動機が存在しないからである。
過去のゲームの真犯人が大量殺人を犯すに至るのは、探偵役である戦人に謎を解かせるためだ。この犯人と探偵の因縁・関係性があるからこそ、人が死ぬだけの事件が発生する。
一方でEP6の狂言殺人はヱリカを対象にしている。単なる来訪者である彼女に対して、本当の殺人事件を提示する必要性がない。だから飽くまでも「ドッキリ」に留まる。
しかしヱリカは実際に殺人を実行した。もちろん先述した通り彼女は単なる来訪者であり、右代宮家を殺害する動機はない。
…であれば、ヱリカは共犯の殺人代行者であり、事件首謀者が裏で手を引いていると考えるのが妥当だ。
また事件に探偵役が必須であることはヴァンダイン6則で定められているが、EP6のヱリカは探偵ではない。
この事件首謀者たる真犯人の正体が過去のゲームと共通であるならば、探偵役もまた以前(EP5を除く)と同じく戦人であると考えられる。
つまり、探偵役の戦人が狂言殺人に参加するも、真犯人であるベアトリーチェと共犯者ヱリカによって本物の殺人計画が仕組まれていたというのが真相だ。
Ⅱ.ロジックエラー密室の解法
・嘉音⇔ベアト人格切り替え説
一般に、ロジックエラー密室の解法として考えられているのは、紗音・嘉音同一人物説を用いた「紗音が隣部屋の窓よりゲストハウスを脱出し、嘉音人格として客室に入室。客室内で紗音人格となることで、客室から嘉音を消失させる」という人格トリックだ。
当記事でも人格切り替えトリックを採用するが、ゲストハウス脱出は別にして、嘉音消失については嘉音⇔紗音人格トリックを必要としない。
嘉音⇔ベアトリーチェの人格トリックにより嘉音消失は説明可能だからだ。
以下は、ヱリカがベアトとの決闘時にクローゼットを青き真実で穿つときのテキストだ。
放たれし5本もの青き真実の楔は、ベアトの頬や髪や肩を掠め、……クローゼットを扉ごと滅多刺しにし、中に隠れている人間を、扉ごと、抉り殺す……!
その5本の楔は、縦に5本が真っ直ぐ打ち込まれていた。それは即ち、第四の晩に、頭を抉りて殺せ。第五の晩に、胸を抉りて殺せ。第六の晩に、第七の晩に、第八の晩に、抉りて殺せ殺せ殺せ…!!
これはヱリカのクローゼット検証時、事件が既に第九の晩にまで至っていることを暗示している。この時点で嘉音は客室より消失、その代わりに復活した魔女ベアトリーチェが客室内に存在しているというロジックが通る。
そもそも恋人たちの決闘に敗北して肉体を失った二人が戦人の救出に向かうのだから、紗音をロジックに組み込むよりも、嘉音⇔ベアトのみで説明する方が、物語自体との整合性も保たれるだろう。
Ⅲ.第九の晩の殺人
・古戸ヱリカ最後の犠牲者説
ロジックエラー密室において「客室内を検証するヱリカは、"嘉音ではない人物X"を発見できるのではないか?」という意見がある。
まずはヱリカの密室検証をおさらいしたい。
客室はベッドルーム・バスルーム・クローゼットの3区分で構成されている。
ヱリカは客室入室後、ベッドルーム、次いでバスルームを確認した。そして彼女はバスルーム確認中に、クローゼット内の戦人と入れ替わりで嘉音が入室、ベッドルームあるいはクローゼット内に隠れたのだろうと推理し、再度ベッドルームとクローゼットを青き真実で貫いた。
つまりベッドルーム・クローゼットのどちらであっても、「少なくとも"嘉音ではない人物X"がいる事実をヱリカは発見できるはず」という指摘は妥当だ。
これについては以下、クローゼット検証時のテキストを手掛かりとしたい。
その人影は、灰緑色のローブのようなものを、頭からすっぽりと被っていた。……無論、それにも穿たれたことを示す大穴が開いている…。
やがて、それはローブではなく、雨ガッパだとわかる。
……ゲストハウスから大急ぎで走って来たなら、それを被ったまま客室に入ることになったとしても、不思議なことではない…。……そして、……ふわりと、………くしゃりと、………雨ガッパが、……人の形を失って、……崩れ、………黄金蝶の群となって、…消える………。
クローゼット内には雨ガッパを頭から被った人影があった。その人影は黄金蝶となって霧散するが、それは上位世界での概念的な描写だ。重要なのは少なくともクローゼット内に人影があったということである。
クローゼットの扉を開いたヱリカは、その中に潜んでいた人影と対面したのではないか。だが相手は雨ガッパにより顔も姿も隠していたため、正体が分からなかったのである。
さて上位世界において、クローゼット内に嘉音が不在であることを提示したベアトは、その直後に弾丸でヱリカの胸を貫いた。…同じことが盤上でも行われていないだろうか?
クローゼット内に潜む雨ガッパの人物=ベアト=真犯人が、扉を開けたヱリカを対面直後に殺害したのではないかと推測する。つまりヱリカは、確かにクローゼット内に“誰か”が潜んでいたことを認識しながらも、相手の正体が分からないままに殺害されたのだ。