ひぐらしのなく頃に業 「猫騙し編」に向けて(出題編考察まとめ)
■記事の前提
「鬼騙し編」「綿騙し編」「祟騙し編」の三編を「業」の出題編であるとする
■惨劇のルール
「ひぐらし業」では惨劇に至るルールが旧作と異なる
旧作は惨劇の直接的な原因として以下の2つが存在した
Ⅰ. 雛見沢症候群発症者による凶行
Ⅱ. 鷹野三四の強い意志による殺人
Ⅰについては各編によって異なる人物が惨劇要因となる。「鬼隠し編」では圭一が、「綿流し編」では詩音が発症することで凶行に至った
Ⅱは各編に共通する殺人であり、女王感染者の梨花を抹殺し34号マニュアルに基づいて雛見沢村を滅菌する「終末作戦」のことである(ただし「綿流し編」などでは失敗に終わる)
「ひぐらし業」での惨劇の原因は次のように変更されている
★仮説A 変更された惨劇のルール
ⅰ. 雛見沢症候群発症者たちは「対象者X」を守るために行動
ⅱ. 北条沙都子は「対象者X」を前原圭一に殺させるために行動
ⅰにおける「発症者たち」というのは、高いレベルで発症して疑心暗鬼に陥っている者だけでなく、フラッシュバックなどで旧作の記憶を継承している者も含む(旧作の記憶を完全に継承していると思われる古手梨花も含まれる)
※フラッシュバック(記憶継承)自体も雛見沢症候群の機能の一つであると考える
ⅰⅱに「対象者X」と記述されているのは、各編によって異なる人物が配置されており、旧作ルールX(発症者の凶行)のように不定形な設定になっているためである
以降、それぞれのシナリオを仮説Aに基づいて考察する
■鬼騙し編 考察
「お父さんを守らなくちゃ…。私が家を守らなくちゃ…。」
「鬼騙し編」における「対象者X」はレナの父親である
このシナリオにおいては、レナがフラッシュバックにより「罪滅し編」の記憶を一部継承し、鉄平・リナを殺害(または殺害した記憶が現実と混濁)。自身の殺人が圭一に暴かれると誤解して殺害を目論んで襲撃したという筋書きである
「鬼騙し編」においてレナが疑心暗鬼に陥り圭一を襲撃したことは当然ながら「対象者X」の護衛に結び付く行動だが、圭一が「鬼隠し編」の記憶を継承したことでレナを家に招き入れたことも「対象者X」の護衛に間接的に寄与している
また梨花の助言も上記における圭一の記憶継承と同じ働きをしている
■綿騙し編 考察
「私は圭ちゃんが大好き…。だから、…何がなんでも守りたいんだッ!」
「綿騙し編」における「対象者X」は前原圭一である
このシナリオでは魅音が「綿流し編」と詩音が「目明し編」の記憶を断片的に継承している。魅音が綿流しで圭一と合流直後に富竹たちとの接触を質問したのも記憶継承の影響だと思われる(祭具殿に侵入したことを察知したにしては情報が早すぎる)
魅音は祭具殿に忍び込んだ圭一を祟りの執行者から守ろうとし、また詩音も梨花が祟りシステムの中枢に位置していると誤解して凶行に至ったという筋書きである
「あの子が…元凶なんだよ…」
詩音は「目明し編」で梨花に襲撃を受けており、その記憶を継承したと思われる
「綿騙し編」における魅音の行動(圭一の幽閉)は「対象者X」の護衛という点で不自然な点はない。しかし圭一が圭一を殺すという状況が設定されていることには疑問が残り、詩音の行動も意味を為しているようには見えない
ただし、梨花失踪後における沙都子の態度の急変は圭一の自殺を誘導しているとすれば説明がつかなくもない(仮説Aⅱ)
「綿騙し編」についてはそもそも「対象者Xが圭一である」という見立てが誤っている可能性がある
■祟騙し編 考察
「堪えねぇな。殺されたってここを退かねえぞ……!」
「祟騙し編」における「対象者X」は北条鉄平である
このシナリオでは「祟殺し編」の記憶を継承した圭一が、詩音による鉄平殺害などを阻止し、間接的に「対象者X」の護衛に貢献している
一方で沙都子は虐待の事実がないにもかかわらず、教室で錯乱の演技を見せ圭一を鉄平殺害に焚きつけていた
最終的に沙都子は「鉄平は警察に連行された」と虚偽の証言をし、兄の形見として金属バットを持たせた圭一と鉄平を鉢合わせさせることで殺害させるように仕向けたが、圭一が奇襲を受けたため、彼女の目論見は失敗した
「祟騙し編」の最後で圭一を襲ったのは鉄平ではなく、今回の発症者である大石。北条家に張り込み圭一を銃撃、逃げる沙都子を追跡し境内で発砲したと考えられる
■語り手は前原圭一
「ひぐらし業」の三編は圭一の視点を通して物語が描写されており、基本的には彼が場にいる事象や、証言や報告などで彼が伝え聞いた情報のみで構築されている
また全てのシナリオで最後まで生存しており、圭一が語り手であると解釈するのは妥当である
仮説Aⅱにおいて「沙都子は圭一に対象者Xを殺害させようと仕向けている」としたが、対象者Xは別に圭一自身が殺害する必要性はなく、むしろ「圭一が自ら対象者Xの死を確認する作業」が必要なのではないかと推測する
なお「ひぐらし業」において、ほぼ全ての死体は圭一が第三者から伝え聞いたものばかりであり、圭一本人が自身で確認したものではない
★仮説B 沙都子側の勝利条件
圭一が対象者Xの死体を発見すること(物語の中で死を確定させること)
これは「鬼騙し編」の部活における「圭一がマジックペンを発見した場合、ゲームマスターの魅音が罰ゲームを受けるという特別ルール」に通じている
■御神体の空洞と祭具殿侵入
「綿騙し編」では富竹・鷹野・圭一・詩音の4人が祭具殿に侵入したが、「鬼騙し編」「祟騙し編」でも奉納演武の場に富竹たちの姿はなく、祭具殿侵入自体は三編に共通するイベントだと考えられる。少なくとも「鬼騙し編」でも彼らは自動車などを残したまま行方不明になっており、軽トラックを奪って逃走したと考えられる
しかしこれは、鷹野の「侵入に対する強い意志」が働いているわけではない
「綿騙し編」で確認されたように御神体の頭部は既に破壊され、内部が空洞になっていた。つまり何者かが綿流し以前に侵入し、御神体に納められていた祭具殿の秘宝を持ち去ったと考えられる。(旧作では「鬼狩柳桜」と呼ばれる刀が納められていたが、今作でも同じかどうかは不明)
鷹野が「秘宝を持ち去った犯人」と共謀していたとすれば、彼らの行動は一種の囮、カムフラージュだろうと推測できる。わざわざ祭具殿に侵入して逃走したとアピールすることで、真犯人から疑いを反らすのが目的である
なお、御神体の中身を持ち去った真犯人については、祭具殿の付近に住んでおり旧作でも侵入の前例がある北条沙都子が有力候補として挙げられる
★仮説C 御神体の秘宝
御神体内部の秘宝は全てのシナリオで沙都子が持ち去っており、富竹と鷹野はそのカムフラージュに協力している
「鬼騙し編」「綿騙し編」で登場した作業着の男たちは、「御神体の秘宝」を捜索を目的としていたならば彼らの行動にも筋が通る。「鬼騙し編」では鷹野が犯人だとして診療所を捜索し、「綿騙し編」では詩音も侵入したため園崎家内部に踏み込んだというわけだ(彼らが旧作における「山狗」と同じ所属の存在であるかは怪しい)
■古手梨花の殺害
旧作において世界をループする(正確には別のカケラ・ゲーム盤に移動する)条件として「古手梨花の死」があった
基本的に梨花の死自体は鷹野が緊急マニュアルを発動させるために発生していたが、「目明し編」「賽殺し編」のようにループのために死ぬシナリオも存在する
「ひぐらし業」でもループの条件自体は同じで、第三者が次のシナリオを展開させる目的で梨花を殺害しているのではないかと考える
★仮説D 梨花を殺害する目的
目的は、勝利条件が達成できず次の物語にループさせるためである
「鬼騙し編」において沙都子と梨花の死はお互いが包丁で刺し合ったことが原因で、「祟騙し編」で圭一と鉄平が殴り合った描写はそれの示唆である
「綿騙し編」では「綿流し編」と同じく梨花の死はイレギュラーで沙都子によるものではない。廊下に落ちているのは凶器ではなく魅音が携帯するモデルガンで、境内で拾ったもの(祭の際に落としたと思われる)を届けに来たところ発症した魅音によって射殺された(魅音は錯乱して自殺か)
「祟騙し編」では圭一が大石に殺害されたと思い、境内に戻って梨花を殺害。直後、大石に射殺される(警官の拳銃の装填数は5発。圭一、沙都子、魅音、詩音に発砲後、錯乱して自殺したか)
■ゲームを俯瞰する上位存在の魔女
※上位存在についての説明は省略する
「綿騙し編」において御神体の頭部は既に破損していたものの旧作のように腕が破壊されていたわけではなく、少なくとも完全な姿で存在している
これは「ひぐらし業」においてオヤシロさま=上位魔女フェザリーヌがゲームマスターの座に戻ったことの暗喩である
★仮説E 上位魔女の存在
「ひぐらし業」のプレイヤーはラムダデルタである
■ラムダデルタの駒
「ひぐらし業」では沙都子がキーパーソンとなっており、旧作の鷹野のポジションに据えられている
旧作の鷹野はラムダデルタの駒として雛見沢のゲーム盤に並べられており、今回は沙都子が彼女の駒になっていると思われる
旧作の鷹野はラムダデルタと契約し「神になる」と宣言した。詳細は省くが、「東京の野村」がクライアントになり終末作戦を実行。神を貶めて自らを「オヤシロさま」と名乗るにまで至った
「ひぐらし業」では終末作戦が実行されておらず、それは鷹野と野村の接触も存在しなかったことを意味する。小泉(雛見沢症候群研究を支援する東京の幹部)を失くして失意の鷹野に寄り添ったのは野村ではなく富竹で、そのため両者の関係は旧作よりも密になっている
「ひぐらし業」の沙都子にも、「鷹野における野村」のような存在がいると推測され、その候補としては「田村媛命」が挙げられる
田村媛命は雛見沢症候群とは異なる寄生虫(ウィルス)の長であり、羽入のような存在。雛見沢症候群と敵対する動機は十分にある
旧作でのラムダデルタの駒、鷹野が滅菌作戦を勝利条件としていたとするならば、それはラムダデルタ側にとって「雛見沢症候群の消滅」を目的としたゲームであったことを意味する
「ひぐらし業」も同様で、沙都子側の勝利条件を満たしたときに「雛見沢症候群の消滅」に繋がる何らかの作用が発生するのではないかと推測する
★仮説F ラムダデルタの駒たちの目的
田村媛命の動機は「雛見沢症候群の消滅による領土回復」
北条沙都子の動機は「症候群末期発症者である悟史の回復」
■フェザリーヌの駒
力の衰えた羽入ではなく、フェザリーヌがGMとして展開する「ひぐらし業」のゲーム盤において、雛見沢症候群は完全にGM側(オヤシロさま)の支配下にある
つまり仮説Aⅰで示した症候群の発症者はフェザリーヌの駒であり、彼らはラムダデルタの指し手を阻むように行動する。また疑心暗鬼の発症者は最終的に自殺する傾向にある可能性がある
フェザリーヌ側の勝利条件、ゲーム盤を再び開催した目的は不明だが、雛見沢症候群・特に記憶継承に関係していると思われる